リモートワークで部下のエンゲージメントを高める：営業部門の成果に繋がる多角的アプローチ
リモートワーク下でのエンゲージメント低下とその影響
リモートワークが常態化する中、営業部門のマネージャー層の皆様にとって、部下のエンゲージメント維持・向上は重要な課題の一つではないでしょうか。対面でのコミュニケーションが減り、部下の様子が見えにくくなったことで、「チームの一体感が薄れた」「部下のモチベーションが低下しているのではないか」「評価に対する不安を抱えているのではないか」といった懸念を感じる場面が増えているかもしれません。
エンゲージメントとは、単に「やる気」がある状態を示すだけでなく、組織や仕事に対して主体的に関わり、貢献しようとする意欲と行動を指します。エンゲージメントが高いチームは、困難な状況でも粘り強く目標達成を目指し、お互いに協力し合い、顧客に対してもより質の高いサービスを提供できる傾向にあります。リモートワーク環境下で営業成果を最大化するためには、このエンゲージメントが不可欠となります。
本稿では、リモートワークにおける営業部門の部下エンゲージメントを多角的な視点から高めるための実践的なアプローチをご紹介いたします。
信頼関係の基盤を築く：意図的なコミュニケーション設計
リモート環境では、偶発的な会話や非公式な情報交換の機会が減少します。だからこそ、マネージャーは意識的に部下とのコミュニケーション機会を設計する必要があります。
定期的な1on1の質の向上
単なる業務報告会にならないよう、1on1の目的を「部下の状況把握」だけでなく、「キャリアに関する相談」「心理的なフォロー」「困りごとの解決支援」など、部下の成長と benessere (幸福度) に焦点を当てるようにしましょう。部下にとって話しやすい雰囲気を作り、傾聴の姿勢を示すことが重要です。
非公式コミュニケーションの機会創出
業務とは直接関係のない雑談ができる機会を意図的に設けます。たとえば、バーチャルランチタイムや、業務開始前・終了後の短時間のオンライン雑談タイムなどです。チャットツールの雑談用チャンネル活用も有効です。これにより、部下は孤立感を感じにくくなり、チームの一員であるという感覚を保ちやすくなります。
透明性の高い情報共有とフィードバック
情報格差はリモートワークにおけるエンゲージメント低下の大きな要因となり得ます。組織や部門の方針、目標、市場の動向、成功事例などをタイムリーかつオープンに共有することが不可欠です。
積極的な情報発信
マネージャーから積極的に部門全体の状況や自身の考えを発信することで、部下は安心感を持ち、部門の方向性を理解しやすくなります。週次のオンラインミーティングでの全体共有や、社内SNS、共有ドキュメントなどを活用します。
建設的なフィードバック文化の醸成
成果が出た際は具体的な行動を称賛し、改善点については「〇〇の行動を変えることで、次の△△に繋がるだろう」のように、成長の機会として具体的にフィードバックを行います。リモートでは表情や雰囲気で真意が伝わりにくいため、フィードバックはより丁寧かつ具体的に行う必要があります。定期的なフィードバックだけでなく、タイムリーな「承認」も重要です。
貢献の可視化と公正な評価
リモートワークでは、部下の「頑張り」やプロセスが見えにくくなるため、成果だけでなく、チームへの貢献やプロセスも適切に評価し、可視化することがエンゲージメント向上に繋がります。
成果だけでなくプロセスや貢献を評価
設定した目標達成度だけでなく、新しい情報共有の仕組みを提案した、他のメンバーをサポートした、顧客との関係性を深化させた、といったプロセスやチームへの貢献も評価項目に含めることを検討します。
貢献の全体への共有と称賛
良い取り組みや成功事例をチーム全体に共有し、該当者を称賛します。オンラインミーティングの冒頭で紹介したり、社内報やチャットで発信したりする形式が考えられます。これにより、貢献が正当に評価されているという感覚が生まれ、他のメンバーの模範ともなります。
自律性の促進と成長機会の提供
部下に適切な裁量を与え、自律的な働き方を支援することも、エンゲージメントを高める重要な要素です。
マイクロマネジメントからの脱却
タスクの進捗管理は必要ですが、過度な管理は部下の自律性を阻害し、不信感に繋がります。明確な期待値と期日を伝えた上で、具体的なやり方については部下にある程度の裁量を委ねます。困っている様子があれば、サポートを申し出る形で関わります。
成長機会の提示と支援
部下のキャリア志向や能力開発ニーズを把握し、関連する研修やセミナー参加を促したり、少し難易度の高い業務を任せてストレッチをかけたりします。リモートでも参加可能なオンライン研修プログラムやeラーニングの活用は有効です。自身の成長が実感できる環境は、エンゲージメントを大きく高めます。
チームとしての一体感醸成
物理的な距離があっても、チームとしての一体感や共通の目的意識を持つことは、エンゲージメントにとって非常に重要です。
共通の目標とビジョンの浸透
部門の目標や会社のビジョンを繰り返し共有し、自身の業務がそれにどう繋がるのかを部下が理解できるようにサポートします。全員が同じ方向を向いているという感覚が、一体感を生み出します。
オンラインでのチームビルディング活動
業務時間内に短時間、あるいは業務時間外に希望者参加で、オンラインでのチームビルディング活動を実施します。オンラインゲーム、クイズ大会、バーチャル懇親会など、堅苦しくない形でメンバー間の相互理解や親睦を深める機会を設けます。
まとめ：継続的な取り組みの重要性
リモートワーク下での部下エンゲージメント向上は、単一の施策で解決するものではありません。本稿でご紹介したように、コミュニケーション、情報共有、評価、自律性、成長支援、チーム文化といった多角的な側面から、継続的にアプローチしていくことが重要です。
部下一人ひとりが組織から承認され、成長機会が与えられ、チームへの貢献を実感できる環境を作ることで、リモートワークでも高いエンゲージメントを維持し、結果として営業部門全体の生産性向上と成果達成に繋がります。まずはこれらのアプローチの中から、自部門の状況に合わせて取り入れやすいものから実践してみてはいかがでしょうか。